Designed by Takuya Matsumi

これまでこの研究会は<老い>と踊りというテーマに即した言葉による語りと身体によるパフォーマンスのあり方を三年にわたって模索してきました。最終研究会では、重要文化財である京都府庁旧本館旧議場の空間を舞台として研究を締めくくります。ここでは昨年行ったパフォーマンスの最後のシーン「よろこびの舞」を新たに合唱とともに上演します。

 動く身体を扱う舞踊では、<老い>は踊り手にとって大きな問題となります。これまでの研究会では、能楽やバレエでのダンサーの引退年齢、作品やダンスカンパニーを成立させるダンサーの条件、舞踊の継承や伝統芸能での一子相伝、稽古の過程、「翁」や「延年」、型の模倣と解放を議論してきました。それと同時に、異なる年代や、舞踊の型、役割、作品の作り方の違いを超えた、研究としての作品を上演しました。

 最終研究会では、文字通りアゴラとして府民が集まる場であった旧議場が、声と身体によって劇場空間に変容します。合唱は、目の前で展開されるダンサーの対話を集団の声として支えます。このギリシャ悲劇や能楽に見られるコロス(コーラス/合唱隊)は、魂を鎮め、共感し、そして歓喜をもって二人の動きと共鳴します。観客かつ聴衆は、このパフォーマンスと集団の声による合唱を目撃する者として存在します。

 能楽は鎮魂の芸能であり、また根底にある演目「翁」はよろこびに根ざす祝祭です。老いのダンスドラマトゥルギーについて探求してきたこの研究会の一つのテーマは、あらゆる人に訪れるという意味では平等な<老い>が、ばらばらな世代、地域、国、時代を繋ぐ一つのリンクになるということでした。今回は<老い>が一人の身体のなかに、個人を超える複数の年代を思い描く想像力ともなり、加えて、個人の年齢を超えて、歴史空間に存在する遥かなる時間を讃えた生のエネルギー循環となることを示していきます。

 当日はパフォーマンスと共に他の研究会メンバーを加えたディスカッションも行います。

 当日の模様を撮影した写真をこちらのページに掲載しました!(2023/04/12 更新)

日時:2023年3月11日(土) 13時30分〜15時30分(開場13時15分)

会場:京都府庁旧本館旧議場 (京都府京都市上京区薮ノ内町)

入場無料/予約制/自由席/先着40名(人数に達した場合は締め切らせていただきます)

申し込み方法:こちらの Forms から申し込んでください。→https://forms.gle/7FmuS4Zt4YuYbfSA8

*京都芸術劇場チケットセンターとは窓口が異なりますので、ご注意ください。

 

企画・ドラマトゥルギー: 

中島那奈子(研究代表者、ダンス研究/ダンスドラマトゥルク)

 

出演: 

髙林白牛口二(能楽師シテ方喜多流)

平井優子(ダンサー/演出振付家)

 

合唱:京響コーラス 

指揮:小玉洋子 伴奏:辻本圭

協力:公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団(京都市交響楽団)

 

研究会メンバー:

児玉北斗(振付家/ダンサー/芸術文化観光専門職大学講師)

森山直人(京都芸術大学大学院芸術研究科客員教授/演劇批評)

 

制作:西原多朱、新里直之(共同利用・共同研究拠点事務局)、伊藤彩里(共同利用・共同研究拠点事務局)

記録撮影:守屋友樹

舞台監督:中村彩世

 

アクセス

地下鉄 京都駅から市営地下鉄烏丸線「丸太町」下車
    または二条駅から市営地下鉄東西線乗車、「烏丸御池」で烏丸線に乗換え、
    「丸太町」下車、徒歩10分

市バス 三条京阪から10系統、京阪神宮丸太町から93系統、202系統、204系統、「府庁前」下車徒歩5分

主催

京都芸術大学<舞台芸術作品の創造・受容のための領域横断的・実践的研究拠点>
2022年度共同研究プロジェクト「老いを巡るダンスドラマトゥルギー」
研究代表者 中島那奈子

協力

tapetum works

お問合せ

info@tapetumworks.com(tapetum works)
075-791-9144(京都芸術大学 共同利用・共同研究拠点)

京都芸術大学共同利用・共同研究拠点の研究会ウェブサイト:https://k-pac.org/openlab/485/

研究会メンバープロフィール
児玉北斗(こだま ほくと)

2001年よりダンサーとして国際的に活動、ヨーテボリオペラ・ダンスカンパニーなどに所属しマッツ・エックらの作品にて主要なパートを務めた。振付家としても2017年に『Trace(s)』、2020年に『Pure Core』などを発表し高い評価を得る。現在は芸術文化観光専門職大学(兵庫県豊岡市)の専任講師としてダンスや振付をめぐる研究・実践・教育に取り組んでいる。Web Site

髙林白牛口二(たかばやし こうじ)

1935年京都市生まれ。幼少より父高林吟二のみに稽古を受ける。1971年喜多流職分となる。1982年4月より、400年の伝統がある京都の喜多流の開示公演「喜多流・涌泉能」を続け、能楽の普及や伝統維持、後継者育成に尽力。初舞台1938年「飛鳥川」子方、1998年「卒都婆小町」、2009年「鸚鵡小町」、2012年「伯母捨」、上記の老女物を3番勤める。2016年「江口」を最後に「シテ」を舞う事より引退。

平井優子(ひらい ゆうこ)

4歳よりクラシックバレエを始める。90年代後半から東京を拠点にダンサーとして活動。2001年フランス政府給費留学生として在仏後ダムタイプのメンバーとなりクリエイションや公演ツアーに参加。高谷史郎作品などのコラボレーションプロジェクトを中心にダンサー振付家として活動する。その他、委託の振付演出作品や民俗芸能と女性をテーマにしたソロプロジェクトも発表。音楽家とのセッションやMVの出演、能楽師らとの共演など活動は多岐にわたる。現在は倉敷を拠点に活動中。第17回福武文化奨励賞受賞。

森山直人(もりやま なおと)

演劇批評家。京都芸術大学大学院客員教授。1968年生まれ。2001年から2022年3月まで、京都芸術大学舞台芸術学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員、及び機関誌『舞台芸術』編集委員。2012年から2019年まで、KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)実行委員長を務めた。著書に『舞台芸術の魅力』(共著、放送大学教育振興会)等。主な論文に、「日本語で「歌うこと」、「話すこと」:演劇的な「声」をめぐる考察」(『舞台芸術』24号)、他多数。

中島那奈子(なかじま ななこ)

老いと踊りという研究分野を切り拓き、創作を支えるドラマトゥルクとして国内外の劇場で活躍。近年の作品に「イヴォンヌ・レイナーを巡るパフォーマティヴ・エクシビジョン」(京都芸術劇場春秋座2017)「ダンスアーカイブボックスベルリン」(ベルリン芸術アカデミー2020)「能からTrio Aへ」(名古屋能楽堂2021)。2019/20年ベルリン自由大学ヴァレスカ・ゲルト記念招聘教授、2022年カナダバンフセンターファカルティメンバー(ダンス)。編著に『老いと踊り』(勁草書房)、2017年アメリカドラマトゥルク協会エリオットヘイズ賞特別賞。ダンスドラマトゥルギーのサイト(http://www.dancedramaturgy.org)を開設し、普及に務める。京都市在住。

本研究会は、以下の2020-2022年度科学研究費助成事業の一環として計画・実施されるものです。
基盤研究(A)「アジアの舞台芸術創造における国際的な「ラボラトリー機能」の実践的研究」研究代表者:天野文雄、領域番号:20H00009